All-4-Oneインタビュー記事 その2
前回に続き、前作『No Regrets』リリース時のインタビュー。
一流のアーティストによるR&B分析は、それだけでも読み応えがありますね。
最後のメンバー紹介では、それぞれの意外な一面を知れて面白いです(笑)
(原文はCLAYTON PERRY’S INTERVIEW EXCLUSIVES)
ヴォーカル・ハーモニー・グループ、All-4-Oneのインタビュー
90年代、ラジオで流れる曲の多くはヴォーカル・グループだった。
しかしここ10年間で、あれだけ多様にいたグループは、ほとんど見かけなくなった。
そんなヴォーカル・グループにとって厳しい昨今でも歌い続けているグループの一つが、ジョン・マイケル・モンゴメリーのカバー「I Swear」で国際的なヒットを放ったAll-4-Oneだ。
愛を込めて「R&B公爵」と呼びたいこのグループは、グラミー賞受賞の経歴を持つ4人組で、15年間のキャリアの中で6枚のアルバムをリリースした。
最新作『No Regrets』でも、変わらず素晴らしい音楽を製作している。
時代に関係なく響いてくるその音は、今なおラジオでかかる曲のメインストリームであると断言できる。
トニー、ジェイミー、デリアス、アルフレッドの4人は、『No Regrets』リリースで忙しい合間を縫って、インタビューに時間を割いてくれた。
このインタビューでは特に、シングル曲「My Child」について、彼らの根強いアジアのファンについて、そしてR&Bのルーツについてを、聞いていこうと思う。
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「My Child」が出来るまで
『No Regrets』を聞いたとき、すぐに「My Child」に惹きつけられました。教師をしていたので、同じ状況の父子がたくさんいることを知っています。
どうしてこの曲が、アルバムをリリースするにあたって重要なシングルに相応しいと考えたのですか?
デリアス
いや、最初のシングルがこれになるとは思ってなかった。収録曲の一つでしかなかったんだ。
ジェイミーがこの「My Child」と他数曲の音源を車の中で聞かせてくれた。
私は、時にメロディが語りかけてくることがあると信じている。
なぜこんな歌詞を書いてるのか、自分でもわからないときがあるんだ。
私に子供はいないけど、この曲を書き始めてから、どこからともなくこの歌詞が出てきた。
まるでこの曲自身が、これがどんな曲かをこちらに伝えてきて、その通りに書き起こしているような感覚だ。
理由はわからない。
同じ状況にいる友達はいるけど、それよりもこの曲がこういう内容になったのは定めのような気がしている。
ジェイミーにこの歌詞を渡したとき、彼はこう言ったんだ。
こういう曲が持つ可能性が、よくわかってるみたいだって。
ジェイミーのその言葉は、私達が「My Child」を好きな理由だと思うし―本物のR&Bが持つ、オールド・スクール・サウンドでもあるしね―実際、私達も聞いた人達も多くの議論をした。
この曲が少しでも、同じような状況にいる人たちの慰めになってくれたら、本当に嬉しいよ。
R&Bに求めるもの
私が他にこのアルバムで好きなのは、「Ol’ Fashion Lovin」です。
この曲は、こんな興味を引く一節で始まっていますね。
「いつから騎士道は、こんなにひどい罪になったんだ?
(When did chivalry become such a crime?)」
最近の男性R&Bアーティストは、性的な曲を作る傾向にあります。
R&Bにずっと持ち続けて欲しい要素って、どんなものがありますか?
ジェイミー
R&Bをよくよく見ていくと、そのルーツは偉大なモータウンの時代に見つけることができる。
カントリー・ミュージックは今でも、男性が感情的になったり傷ついたりするのは情けないと歌っている。
今の若い男性の流行は「俺はイケてる、乱暴でギャングスタだからな」というものだ。
もし自分の彼女を怒らせたら、「待って待って、お願いだから行かないで!」となるのにね。
彼らは、男は雄々しくマッチョでなければ、という価値観の中で育ってきた。
でも私達が聞いて育ったアーティストは、女性とうまく会話する術を知っていた。
ベイビーフェイスは、こんな歌を歌っている。
「あなたの家賃を払うよ。今夜のディナーも作ろう。」
(「Soon As I Get Home」)
働く女性は、この歌が大好きだ。その人達に限らず、皆この曲は好きだよね。
特に初期のR&Bは、男性がうまく感情を表現していた。
実際の会話では難しいことでも、歌ならそれが出来るんだ。
私は、それが今のR&Bには無くて、取り戻した方がいい要素だと思っている。
男性には、話しにくいことを怖がらずに言うことが必要なんだ。
音楽がいつの時代も果たしてきた役割の一つに、自分では言えないことを代弁する、というものがある。
それが、今の音楽には失われている気がするんだ。
最近は音楽がかつて果たしていた、聞いている人に言葉を与えて本人に代わってその思いを表現する、という役割が無くなってしまっているので、話す方法を知らず、話したいとも思っていない人が増えていると思うんだよね。
デリアス
私達はそんな若者に、やり方を教えてあげられると思うんだ。
ジェイミー
そうだね。
私のお母さんはビリー・ディー・ウィリアムズが好きだったから、私も「マホガニー物語」を見て育ったんだ。
そのドラマと劇中で使われていたR&Bは、女性とどう接して気遣うべきか、よく示していたよ。
その通りにしたら―みんなやり方は知っているけど、大きな声では言わない―奥さんは幸せだし、家族だって幸せだ。
奥さんが幸せなら、子供だって幸せだ。そうなるように努力することは、男性にとっていいことしかないんだよ。
他に私が好きなのは、「If Your Heart’s Not In It」です。
この歌詞は、どうやって作られたのですか?
デリアス
実はこの曲は、私たちが作ったものじゃないんだ。イギリスのグループ、Westlifeの曲なんだよ。リリースしなかったけどね。
彼らのメンバーにジェイミーの知り合いがいて、彼がこの曲を持ってきてくれて聞いてみたんだ。
まさに、All-4-Oneの曲だったね。
ラジオから好きな感じの曲が流れてきたら、自分でレコーディングしたくなる。
だから、誰かがそのチャンスを得る前にこの曲を聞けて本当に良かったよ。
人気を保ち続けている理由
デビューから15年が過ぎましたが、この変化が激しい音楽業界を生き延びてこれたのは、何故だと思いますか?
ジェイミー
一つ目の理由は、神のご加護があったからだ。神は私達が夢見た生き方をすることを許し、よく導いてくださった。
二つ目は、私達には幸運にも長く愛される曲があることだ。
そんな曲を私は“マネー・ソング”と呼んでいる。
マネー・ソングでコンサートが始まり、また違うマネー・ソングでコンサートを終える。
そんな人々に愛され続ける曲があるのは、本当に恵まれている。
三つ目。
私は、All-4-Oneがこれだけ長きに渡って一緒にやってこれたのは、友情の果たす割合が大きいと思っている。
我々はいつだって、心からお互いのことが大好きだ。お互いを兄弟のように感じている。
子供達が他のメンバーのことを“叔父さん”と呼ぶのが、何よりの証拠だ。
私達はずっと家族同然の付き合いをしてきた。
お互いに気遣い敬愛し、そして楽しんでやってきたんだ。
アジアでの人気について
あなた達はアジアでとても人気がありますね。
あなた達の何が、他の人よりも彼らを惹きつけると思いますか?
個人的に、そこにとても興味があります。
ジェイミー
私が思うのは―聞かれたときは、いつもこう答えるんだけど―、Rock ‘n’ RollやR&Bは、アメリカが世界にファンとしての楽しみ方を広めた。
マイケル・ジャクソンがザ・フォーラム(※訳注:LAにある、17,500人規模の会場)でコンサートをやると聞いたら、外のテントで2日寝たものだ。
そういうロックやR&Bのファンとしての楽しみ方をアメリカ人が広めたと思うんだ。
DJは今でもプレイリストを作るとき、マイケルの「Beat It」を8回もかけるんだ。それだけ好きなんだよね。
それから色々経た今のアメリカでは、そういう楽しみ方をする人達はいなくなった。そういうのは卒業したような感じだよね。
でもヨーロッパやアジアのファンは、今でもその楽しみ方をしてくれている。彼らは、それを絶対に忘れない。
彼らは曲を聞くと、初めて聞いたときの気持ちをすぐに思い出す。
アメリカでもそういう人が今でもいるから、昔のグループが新譜を出さなくてもツアーを続けられているんだと思うんだ。
20年間新しい音源を出さなくてもステイプル・センター(※訳注:LAにある、2万人規模の会場)でコンサートを開けるのは、オリジナル・ファン―世界にファンというものを広めた人達―が、今でも見に行くからだ。
我々のアジア人気も、きっとそういうものだと思う。彼らには音楽の真価がわかるんだろう。
他の国に行くと言葉の壁があるから、見に来てくれている人と会話をすることはほとんど出来ない。
それでも彼らは、歌の歌詞を全て知ってるんだ。
彼らは自分達で、それぞれの単語がどういう意味で、この曲がどういうことを歌っているのかを調べてくれている。
時には、訳してもくれてるんだ。
これがどれだけ凄いことか、わかる?
彼らは私達の曲が好きで、私達が来ることをチェックしてくれている。コンサートを見るために必要な手はずを整えて来てくれる。
彼らはずっとサポートしてくれているんだ。
今のように世界中で人気が出たターニング・ポイントは、どこだと考えていますか?
デリアス
「I Swear」をリリースした後だ。
正直に言うと、この曲が世界的にヒットするとは思ってなかったんだ。
1stアルバムの中でも異色の曲だったからね。
この曲が世界中の人に愛され、聞いた人は私達のところに泣きながらやって来てこう言うんだ、これは人生の一曲だと。
若いアーティストにアドバイスを求められたとき、こう言っている。
「もし幸運にも世界的にヒットする曲に恵まれたら、他の国にコンサートをしに行くんだ。それをしっかりやり続けたら、アメリカでの人気が下火になってもそれらの国でその後20年はコンサートが出来るから」とね。
本当に後悔は無い(No Regrets)?
最新作のタイトル『No Regrets』は読んで字の如しですが、15年のキャリアを振り返っても、本当に“後悔は無い(No Regrets)”のでしょうか?
ジェイミー
大きな浮き沈みの両方を経験して学んだことの一つは―これは音楽に限らず人生全般に言えることだけど―自分に起きる全てが、今の自分、そして未来の自分を形作る、ということだ。
人生にいいことは、必ず起きる。そしてもちろん、苦しいときも訪れる。
私達はグループとして、その両方を実にたくさん経験してきた。そしてご覧の通り、今も一緒で健在だ。
今でも自分たちのやっていることが大好きだ。
これまでの道のりの中で多くの挑戦をしてきたから、私達は今こうやってここにいる。
だから後悔は全く無いんだ。
このアルバムは、今言ったようには聞こえないかもしれない。直接そう歌っている歌詞は無いからね。
経験してきたこと、全てが財産だ。だから後悔は本当に無いよ。
メンバーによるメンバー紹介
あなた達は世界中で人気がありますが、あなた達のように1stアルバムから最新作まで独自の世界観を失わずに輝き続けることは、容易いことではないと思います。
それを踏まえた上で、それぞれのメンバーのグループでの役割を説明してもらえますか?
ジェイミーはトニーを、デリアスはアルフレッドを、アルフレッドはジェイミーを、トニーはデリアスの紹介をしてください。
トニー
ジェイミー
トニーのグループでの役割はいくつかある。
歌に関しては、トニーは一番高いパートを歌っている。All-4-Oneの曲の中で、ハーモニーの中の一番高い音は、全てトニーの声だ。
トニーは、フレッシュに響くファルセットと伝統的なファルセットの両方を持っていて、どちらも素晴らしい。
信じてもらえるかわからないけど、トニーの声はAll-4-Oneの楽曲を支えて形作るものなんだ。
これは私の考えだけど、どんな曲でもトニーの歌声があるから、聞いたときにAll-4-Oneらしさを感じられるんだと思っている。
そしてトニーは、空港ではしゃぎ過ぎるところがある。
台湾に行く途中の空港では、マシンガンを装着して武装した警備がトニーを彼らの間に座らせたくらいだ。
だから空港では彼が羽目を外さないよう、私達が見張ってないといけない。
それはとても重要な役割だよね(笑)。
アルフレッド
デリアス
アルフレッドのパートは、ベースだ。曲の中でどこまでも低く響いている声は、全てアルフレッドだ。
ここはよく聞いてほしい。
多くのグループに“ベース”を歌う人はいるけど、その多くは本当の意味でのベースではない。でもアルフレッドは、間違いなくベースなんだ。
彼は誰もが驚くような低い声が出せるんだけど、女性が近くにいるときに好んでその声を使うね。
私達と一緒にいるときは、普通の声だ。でも女性が近づいてくると、アルフレッドの声は途端に低くなる。
それを聞いた女性は、そんなしょーもないものにうっとりしてるよ。
デリアス
トニー
デリアスのシンガーとしての役割は、間違いなく甘いR&Bの響きだ。
他のどんなR&Bシンガーにも勝る、ソウルフルな歌声だと思っている。
グループでの役割は、いくつかある。
デリアスがよく言うのは、こんなことだ。
「さぁ、練習しよう/一緒にリハーサルしよう/夜遅くには出歩かない約束だろ?/寒い日は必ずマフラーをしていくんだ」
彼は他のメンバーがコンサートにベストな状態で臨めるように、常に気を配っている。
ちょっと行き過ぎたところもあるけど、でも家族のような気遣いだよね。
生まれながらのお父さんタイプなんだろうな。
ジェイミー
アルフレッド
ジェイミーはいつもスタジオで、ずっと作業している。
彼は私達をまとめて、全てはうまくいくと鼓舞してくれる。
あらゆることに精通しているのに気さくで親しみやすい、素晴らしい人だよ。
ジェイミーとその家族には、本当に多くのことを学ばせてもらっている。
兄弟同然のジェイミーと二人。私は心からこのメンバー達を自慢に思ってるんだ。
新しいファンに向けたメッセージ
iTunesを通して新しくファンになった世界中の人が、あなた達のスタイルが多岐に渡っていることを理解するには、どの曲が適してしていると思いますか?
ジェイミー
幸運なことに、最新アルバム『No Regrets』は、昔からのAll-4-Oneらしいものも含め、様々なサウンドの曲を作ることが出来た。
今回の収録曲にも、1stアルバム収録の「I Swear」や「Down to the Last Drop」、ディズニー映画『ノートルダムの鐘』の主題歌「Someday」のような、歌詞が良くてメロディも響き渡る、王道のPOP/R&Bの曲もある。
でも今までのAll-4-Oneとは、また少し違うように感じられる曲もあるから、きっと楽しんでもらえると思うよ。