これは2014年9月に公開した記事です
懐かしい。もうちょうど3年前なんですね。
このライブに行って、すっかりNORIKIYOの大ファンになりました^ ^
記念すべき、初単独ライブ
日本のHIPHOPが好きな人なら知らない人はいない、人気と実力と話題性までも兼ね備えたラッパーのNORIKIYO。
年は35だが、音楽のキャリアを本格的にスタートさせたのは意外に遅く、そのせいか知名度にそぐわずこれまで単独公演は行っていなかった。
そんなNORIKIYOの初単独ライブ「『花水木』Tour Final」@恵比寿リキッドルームに行ってきた。
いいライブになるだろうと予想はしてたけど、いや凄かった。。
タイトで飽きさせない魅力に富んだステージは、なぜこれまで単独をやらなかったのかと疑問に思うほどの完成度。
事前に発表されていた多くのゲストも合間合間のスパイスという感じで基本的にはNORIKIYO一人で見せてくれたのも、その魅力を存分に味わえてNORIKIYOファンにとっては嬉しかった。
そうは言っても、やはり初めての単独。そこでは他にも多くの出演者がいるクラブイベントと違い、場を盛り上げる以外のことも求められる。
共感できる悲しみから皮肉やからかい、時に痛烈なDisをも繰り広げるNORIKIYOという人を、一アーティストではなく人間対人間として向き合うこの単独ライブという場において、どう受け止めたらいいのか。
そんな戸惑いが最初、確かに私の中にはあった。
もちろんライブが進むにつれてそんな感覚は薄らいでいくのだが、はっきりその距離感が無くなったのは終盤。
思ってた以上に集客が良かったらしく、我々観客に向かって何度もお礼を言い、「本当に有難いし、諦めなくて良かったと思ったし、次はこんなことをやりたいという欲も出てきた」と言っていた姿がなんだかとてもリアルで印象深かったし、“NORIKIYO”という人に出逢えたことがわかった。
この感じ。この人。あの曲たちは全て、ここから生まれたんだ。
一体感に包まれた会場
本編ラストは、アルバムのトリでもある「ロンリーロンリーロンリー」。
どんなに好きな人でも夜に同じ夢を見ることはできないと言われて、結局人間は孤独なんだと大きなショックを受けた彼が、でもその孤独を曲にして、聞いている人と共有することができたら、その間は孤独ではないんじゃないかと思って作った曲だと解説していて、こんな風に曲の背景も聞ける、ワンマンの素晴らしさを改めて噛みしめた。
本来はCD同様SAYを迎えて披露する予定だったが、前日にSAYが男子を出産し(おめでとうございます!)、この日はNORIKIYO一人でのパフォーマンスとなった。
SAYがいた方が、より完璧な演奏となったことだろう。しかしSAYがいなかったことによって、必然皆の意識がNORIKIYOに集中し、あの一体感が生まれたことも確かだ。
MV同様にNORIKIYOが執る指揮に合わせ、全員で大合唱。決して狭くはないリキッドルームに、皆の歌声が響き渡った。
友達でも家族でもない、アーティストとファンという不確かな関係でのみ繋がっているこの場の、あれは正に極致だった。
曲が終わり、深々と頭を下げる時に一瞬見えたNORIKIYOの口元が歪んでいた。
ゲストも豪華!
豪華ゲスト陣もそれぞれに魅力的だったけど(あんな贅沢な漢の使い方ある!?)、個人的に特に印象深かったのはサイプレス上野(以下、サ上)とSHINGO★西成。
「アトラクション」でWATT a.k.aヨッテルブッテルと一緒に出てきたサ上は、フックの途中で袖にはけてしまい、そっちを気にしているNORIKIYOの様子から何かトラブルかと私も気を揉んだが、アレで登場し直すためだったという(笑)。
SHINGO★西成は本編の「仕事しよう」ではなく、アンコールの「一網打尽」の時。
曲が終わってNORIKIYOが戻るようお願いした瞬間、SHINGO★西成が歌い出した「倍ヤバイ」!
観客も一斉に歌い出し、このままこの曲に流れ込むのかと思いきや、そのまま「バイバイ」と言ってSHINGO★西成は戻ってしまいました(笑)。
自分の持てる全てを賭けて臨んだライブのステージ上で、これだけ自由に暴れられるNORIKIYOも大変だなぁと思った(笑)。
そんなここ一番の大舞台で、30分程度とはいえステージを任されたWATT a.k.aヨッテルブッテル。
『メランコリック現代』を丸々リミックスさせるあたり、NORIKIYOもかなり買ってるなぁと思ってたけど、それをさらに証明するような大役。
まだ若そうなのに、見せ方が堂に入っててびっくり。今後がさらに楽しみになる人だった。
これまでの集大成と、これからと
しかししかし。
「秘密」が始まったときに盛り上がる会場を見て、なんで今まで単独をやらなかったんだと腹立たしさを覚えるくらいに、歴史的な夜だった。
全アルバムを持っている人の数を見て喜び、しみじみ「もっといい曲を作れるように頑張るよ」と言ったNORIKIYOの姿に驚きながらも、その存在を近くに感じもした。
今回のライブのキーワードになっていた、証人・目撃者という意味の“Witness”。
この夜が今までのキャリアの集大成であると同時に、次のステージへ進む第一歩でもあるということは、ライブを見た後に実感したことだが、そうなることを最初から狙って本当に実現させたNORIKIYOに、改めて感嘆。
このライブへの意気込みを聞かれ、不安の二文字しかないと答えていた彼だが、その不安をずっと抱えながらより良いものにしようと努力し続けたことが、ここに結実したのだろう。
その事実に、ただただ圧倒されてしまう。
本当に、素晴らしい体験だった。
そしてそれだけの重圧を背負ったNORIKIYOの望みは、「来てくれた人がちょっとでもいい顔になって帰ってくれたら」という、いっそやりきれないほどに、つましいものだった。
このライブがどれほどの、どういう類のものだったかは、全部の曲が終わって会場が明るくなったときに、客席から自然発生した拍手が、何よりも物語っている気がした。
『花水木』からわずか7ヶ月後にリリースされた『雲と泥と手』もかなりの名作でびっくりだが、なんと年内にもう一枚アルバムを出す予定らしい。
かつてないほどに精力的に活動するNORIKIYO。きっと今後も、多くのクラブイベントに出演するだろう。
でもたまにはこうやって単独をやって、我々ファンに会いにきてほしいなぁと思わずにはいられないほど、色んなものを交わした夜だった。
最新アルバム『雲と泥と手』と今回のライブに関するインタビュー
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