これは2013年5月に公開した記事です
過去ブログに公開した記事を、加筆修正してこちらに再掲しています。
昭和レコードツアーへ
2012年10月に渋谷O-EASTにて行われた、「昭和レコード」ツアー&SHINGO★西成『ブレない』リリースツアーファイナルのDVDが、遂に発売になった。
これを機に、あの奇跡のような一夜を自分なりに振り返ってみたい。
この公演、何と参加メンバーが、サイプレス上野とロベルト吉野、NORIKIYO、般若、漢、RHYMESTER、SHINGO★西成という錚々たる顔ぶれ。
しかも全員、曲がいいだけじゃなくライブパフォーマンスにも定評がある人ばかり。これ本当に実現するのかと、始まる直前まで実感が湧かないほどの布陣だった。
サイプレス上野とロベルト吉野
トップバッターはサイプレス上野とロベルト吉野。
さすがのステージングで会場の空気を作り、しっかりと場を温め、この豪華メンバーライブの一発目として十分な役割を果たした。
個人的に諸事情により直前までテンションダダ下がりだったのだが、そんなの関係なくアゲてくれた彼らの力量に、改めて感嘆した。
さすがは横浜No.1モテ男!
NORIKIYO
次はNORIKIYO。
1曲目の「秘密」など、この日の出演者の中でも特に抒情的な曲も披露しながら、途中、鮮やかに粋に喧嘩を売った姿に、衝撃を受けた。
音源同様、ステージでもゲストが多く、もっとNORIKIYO一人で魅せてほしかった部分もあったが、ラストの「2 FACE」は別格。
かつてSEEDAやNORIKIYOと共に並び称されたBESのあまりの変貌振りに、一緒に行った家族は大きなショックを受けていたが、「昔の曲はやりたくない」と公言しているNORIKIYOが最後に「2 FACE」を選んだのは、この曲が10年以上聞かれ続ける魅力があるのはもちろん、BESの再スタートを祝福して応援する意味合いも強かったんじゃないのかと、個人的には思っている。
田我流
シークレット・ゲストとして「あの鐘を鳴らすのは、、俺」の1曲だけ披露した田我流。
その後、stillichimiyaをキッカケに田我流ソロにもどハマりすることになるんだけど、このときはよくわからなかった。
今わからなくてもいずれわかる、というBOSSのリリックが突き刺さった田我流との出会い。
今見たら、DVDでもヤラれるのに。
般若
3番手に登場した般若は、昭和レコードのレーベルオーナーらしく(?)シャツにネクタイ、黒縁眼鏡という出で立ち。
この顔ぶれでもトリを務められる実力を持ちながら、新曲等をさらっと3曲やってさっと終わったあたり、どこまでもクレバーな人だと感じた。
漢
レーベル仲間のBeat Boxで始まった漢は、ライブの直前まで事情により車をぶっ放していたらしく、タオルで大雨に濡れた顔を拭きながらの登場。
この日一番ユルいステージであったにも関わらず王者の風格を感じさせる、色々な意味で凄いステージだった。
観客にすら威圧感を与える空気の中で繰り出される、ユーモアたっぷりの独特なMCも冴えていた(笑)。
しかしステージ登場時には上がり気味だった息が、終盤には落ち着いていた。
あれだけの言葉数を吐きながら呼吸が落ち着いていく。一流のMCを支えている陰の努力を垣間見た気がした。
RHYMESTER
実は初めてステージを見たライムスター。
「King of Stage」の称号に恥じない、楽しませてくれるパフォーマンスだった。
あまりにもうまく盛り上げるので、次の大トリ・SHINGO★西成の最初はちょっと疲れてしまっていたほど(苦笑)。
96年に行われた伝説の「さんピンCAMP」の出演者であり、現在までコンスタントに活動を続けて人気もある数少ないアーティストである彼らが、ステージ上でSHINGO★西成に敬意を表す姿に、今日のライムスターの地位の意味がわかった気がした。
SHINGO★西成
そんな数々のツワモノの最後を飾ったのが、大トリ・SHINGO★西成。
直前のライムスターが2MC 1DJ、途中にダンサーも交えてかなり華やかなステージだった一方、SHINGO★西成は1MC 1DJだったが、全く見劣りのしない、シンプルであるが故に余計に胸に響く、正に「ブレない」ステージングだった。
34歳でデビューし現在40歳なので、キャリアはそこまであるわけでもないが、あのライブの説得力は、40歳という人生経験故なのか、彼の人間性によるものなのか。
大トリらしい、素晴らしいエンディングだった。
この日のラストは「心とフトコロが寒いときこそ胸をはれ」。
アルバムではさらっと3曲目に収録されているこの曲を最後に持ってくることで、その真価をじっくり味わえたし、何よりSHINGO★西成という人間のあったかい強さが直に伝わってきた。
彼の音楽活動におけるメッセージは、この曲に集約されてるんじゃないかと思ったほどだった。
段取りも素晴らしかった!
出演者と同じくらいに素晴らしかったのが、段取り。
1つのステージが終わるとすぐに次のステージが始まる。
流れるようにスムーズな進行のおかげで、3時間半という長丁場であったにも関わらず、全く飽きることなく最後まで楽しめた。
これも般若の采配なのだろうか。見事の一言に尽きる進行だった。
一夜限りの豪華コラボレーション
このメンバーだからこそ実現した夢のコラボレーションもまた、今回の目玉の一つ。
般若とNORIKIYO、NORIKIYOとSHINGO★西成、かつてのレーベル仲間であるSHINGO★西成と漢にMEGA-G、PRIMALまでも参加したステージは、それだけでも十分に価値のあるものだった。
(DVDにも収録されている、「神奈川UP」→「東京UP」→「大阪UP」は、まさに垂涎モノ!)
DVDでは、NORIKIYOと共演した後に、般若が「今日は最高だぜ!」と笑顔で言うシーンがアップで写っている。
ある意味、1つの盛り上がりの頂点にも感じる場面だが、現場での印象はちょっと違った。実際は、DVDで見るよりももっと、静かでさらっと言っている感じだった。
あの日の主役はあくまでもSHINGO★西成であり、どちらというと般若はその進行を滞りなく進める方に主軸があったようだが、それでも会場を見渡して、言わずにはいられなかった一言。
メインとして立たないように自分を抑えながら、それでも口をついて出てしまった、そんな感じで発せられた一言だった。
静かで控えめながらも力強いその発言に、般若がこの日のためにいかに多くの労力を費やしたのか、どれだけのものを懸けてきたのかを、はっと気づかされるような、そんな瞬間だった。
かけがえのない一夜
ライブ前にDJ FUMIRATCHがかけていたBlackstreetの「No Diggity」のおかげで、その収録アルバムにどハマりして来日公演に行ったり、今まであまりちゃんと聞いていなかったNORIKIYOを改めて聞き直して、数ヶ月その虜になったりするなどの余波があった、「昭和レコード」ツアー&SHINGO★西成『ブレない』リリースツアーファイナル。
当日体調不良で、うっかりするとドタキャンすることすら考えていたのが空恐ろしいくらい、人生の決定的な一夜になった。
「苦言」とまでは言わないまでも、せめて「秘密」は入れてよ!とか、いくつかの不満はありながらも、あの夜が自分にとってどれだけ意義深いものだったかが、DVDを見ることでしっかり自分の中に落ちた。
奇跡のような一夜。
しかしその奇跡は決して偶然の産物ではなく、参加したアーティスト、スタッフの努力の賜物だ。
そんな彼らと、これからもまた違う場面で出会う機会はあるだろう。そう思うと、背筋の伸びる思いすらする、そんな体験をした夜だった。