Good Music Junkiesからブルーハーブへ ―ライブレポート 2014/5/2―

スポンサーリンク

これは2014年6月に公開した記事です

過去ブログに公開した記事を、加筆修正してこちらに再掲しています。

『演武』15周年記念GIGへ

2014年5月2日、札幌が本拠地のブルーハーブ(Tha Blue Herb)が初めて東京で行ったライブ『演武』の、15周年記念GIG@下北沢SHELTERに行ってきた。

DJ DYEがかけるイントロに、久しぶりに「次は札幌~」の効果音が使われたなぁと思っていたら、驚いたことに1曲目は「未来は俺等の手の中」。

ライブの終盤に曲のラスト部分を全員で合唱は一つの定番だったが、最初の方をライブで聞いたのは、7年くらい通って初めての経験だった。

今夜は何かが違うと、否が応にも感じざるを得ない始まり方。

最新の4thアルバムの曲の間に、最近よく聞かれる1stや間違いなくアゲてくれる2ndの曲を織り交ぜたセットリストだったが、直近ではあまり聞かれなかった3rdの曲をかなりやってくれたのも、その頃からライブに行き始めた私には感慨深かった。
(つまり包括的にやっていたことに今気づいた。)

BOSSの変化

地元札幌の仲間・JERRY “KOJI” CHESTNUTSが来て、ハーベストムーンの「コンクリートリバー」を全員で大合唱したりと、15周年らしい特別感ももちろんあったけど、それよりもここに書き留めておきたいのは、ステージ上でのBOSSのナチュラルさだ。

今までもキッチリ頭を下げて礼をしたり、決して威圧的だったわけではないが、それでも2ndの曲に象徴されるような孤高が故の近寄りがたさみたいなものはあった。

演武10周年の頃にライブでよく言っていた「空間の彫刻」。

正にそれが形作られていく様を目撃していた身には、その凄さに息を飲むような感覚があったが、その空気感が今回のライブには無かった。

例えるなら、今までのブルーハーブのライブは深夜のようだった。
集中力が高まり、感覚が研ぎ澄まされていく、あの感じ。

対して今回のライブは、明け方のようだった。
空気が張り詰めているような、透き通った緊張感は無く、代わりに薄い光が一筋射し込んでいる感覚。
穏やかで、根源的な幸福感さえ感じさせる夜明けに、確かに通じるものがあった。

3rdの頃からその兆候はあったが、それがついにライブにも表れてきたな、という感じ。

4thが出たのが2012年ということで、アルバムでもライブでも3.11は大きなテーマだったが、今回のライブはそれを踏まえた上での日常を歌っていて、そこも印象的だった。

Liveの終盤にBOSSが言っていた「あなた方が俺等を使って演奏してるんだよ」という言葉も、意味深い。
他に類を見ないほどに、たゆまぬ努力と覚悟を感じさせるステージをする彼らだから余計に。

「俺等以外は全部クソ」だった彼らが、厳しく険しい道を15年歩み続けてこの日、ステージ上で他のアーティストにリスペクトを捧げ、我々“自分のためにお金を払ってライブに来た客”に向けて「あなた方が俺等をそうさせたんだ」と伝えたあのときの会場は、一つの天国のようだった。
込み上げる感情で、視界が曇った。

ブルーハーブのライブで、そんな風になるとはなぁ。。

この変化にはもちろん好き嫌いがあるだろう。特に20代までの若い世代が、「Candle Chant」に代表されるようなクールに内面を掘り下げるかつての姿勢を好むだろうことは、経験から想像に難くない。

それでも30を過ぎた私は、生々しい苦しみとそこから絞り出した希望を歌う今の彼らに心が震えるし、求めている。おそらく、私よりも上の年の人はもっとそれを感じているのだろう。

この日のラスト近くには、なんと1曲目の「未来は俺等の手の中」を再度披露していた。
同じ曲を2回やるなんて言うまでもなく初めて見ることで、今回の演武15周年が、文字通り演武15周年―地位も名声もお金も何も無かった15年前と、それら全てを手にした彼らがここから進む道を再確認するような、そんな姿勢を感じる構成だった。

「盛大に祝うのは10周年のときにやったから、今回の15周年は普段やっているような小箱でやりたい」というBOSSのインタビューでの発言の意味するところを、体感した気がした。
(ただし、それが我々見る側にとっても良かったかどうかは、また別の話(笑))

今回のライブを見た後、私の中には、恥ずかしい生き方はできないな、という思いが深く残っていた。

本ブログのタイトルは

このブログのタイトル【Good Music Junkies】は、実はライブでBOSSがよく言うフレーズで、そこから取っている。
でも今までのブルーハーブのライブはここで安易に取り上げられない、敷居の高さみたいなものがあり、タイトルの由来を説明できるときはこないと思っていた。

だから今回のように、あまり構えずフラットに書くことができて純粋に嬉しいし、私自身、驚いてもいる。人生って本当に、思いもよらないことが起こるものだ。

これからもブルーハーブのライブには通い続けるだろう。でもここで触れるのは、BOSSの言うように「強制は無しで」、気持ちが向いたときに書きたいと思う。

そんな自由で主体的な付き合い方が今の私には心地いいし、そう言っていたBOSSの姿勢が、やっぱりいいなぁとしみじみ感じるライブだった。

BOSSがこのLiveへの意気込みを語った、Rooftopのインタビュー

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA