「Englishman in New York」に秘められたNaturally 7のルーツ

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これは2014年5月に公開した記事です

前回の来日で、初めてNaturally 7の「Englishman in New York」を聞いて感動し、元ネタを中心に紹介した記事です。
そのため、当時のメンバーでの曲紹介になっていることをご了承ください。

ちなみに新メンバーのショーンも、ジャマイカ系でもあるみたいですね。

オリジナルの「Englishman in New York」

原曲はもちろん、スティングの「Englishman in New York」。
スティングの詳しいキャリアはWikipedia先生に任せ、ここではイギリス出身ということだけお知らせして、早速その歌詞を見ていきましょう。

「Englishman in New York」

I don’t drink coffee I take tea my dear
I like my toast done on one side
And you can hear it in my accent when I talk
I’m an Englishman in New York

See me walking down Fifth Avenue
A walking cane here at my side
I take it everywhere I walk
I’m an Englishman in New York

I’m an alien I’m a legal alien
I’m an Englishman in New York
I’m an alien I’m a legal alien
I’m an Englishman in New York

If, “Manners makes man” as someone said
Then he’s the hero of the day
It takes a man to suffer ignorance and smile
Be yourself no matter what they say

I’m an alien I’m a legal alien
I’m an Englishman in New York
I’m an alien I’m a legal alien
I’m an Englishman in New York

Modesty, propriety can lead to notoriety
You could end up as the only one
Gentleness, sobriety are rare in this society
At night a candle’s brighter than the sun

Takes more than combat gear to make a man
Takes more than a license for a gun
Confront your enemies, avoid them when you can
A gentleman will walk but never run

If, “Manners makes man” as someone said
Then he’s the hero of the day
It takes a man to suffer ignorance and smile
Be yourself no matter what they say

コーヒーは飲まない 愛する紅茶がいい
トーストは片面だけ焼いて
話すときにでる 私のアクセント
はニューヨークにいる イギリス人だ

5番街を歩く私の
傍らにステッキがあるだろう
どこにだって 持ち歩くんだ
私はニューヨークにいる イギリス人

私はよそ者 税金を納めているけどよそ者だ
ニューヨークにいるイギリス人は
そうだ私は宇宙人 入国手続きをした宇宙人なんだ
ニューヨークにいるイギリス人なんてものは

よく言われるように 「礼節が人を作る」なら
イギリス人は ヒーローにだってなれたはず
でも実際は 無知と嘲笑に耐えている
自分らしくいるんだ 周りが何を言おうとも

私はよそ者 税金を納めているけどよそ者だ
ニューヨークにいるイギリス人は
そうだ私は宇宙人 入国手続きをした宇宙人なんだ
ニューヨークにいるイギリス人なんてものは

謙遜や礼儀は ここでは悪評に繋がりかねない
誰にも理解されないまま 終わるのか
優しさや節度は この社会では稀なんだ
夜のキャンドルが 昼の太陽よりも輝くこの地では

一人前と認められる戦闘服を着るよりも
銃のライセンスを取るよりも
敵に出会ったときは 逃げるが勝ち
そんなときでも紳士は走らない 歩いていくものさ

よく言われるように 「礼節が人を作る」なら
イギリス人は ヒーローにだってなれたはず
でも実際は 無知と嘲笑に耐えている
自分らしくいるんだ 周りが何を言おうとも

イギリスに紅茶の文化があるのは有名ですよね。
アメリカはスターバックスを出すまでもなく、コーヒーの文化

同じように、イギリスでは「紳士(Gentleman)」が尊敬を集め、対してアメリカでは「ヒーロー(Hero)」が憧れの的となっています。

余談ですが昔聞いた話で、災害時などに大勢を誘導したいとき、イギリスでは「あなたが紳士になりたいなら」と言うと指示に従ってくれやすく、アメリカでは「ヒーローになりたいなら」らしいです。
ちなみに日本では、「皆さんそうしてるので」らしいですが、確かに納得できる気がします(笑)。

そして歌の主人公は、現代のイギリスでも誰も持ち歩いていないであろう、紳士の象徴であるステッキを挙げ、意固地と思えるほどにイギリスらしさを強調しています。

ライブでガーフィールドも、ここでステッキを持つ仕草をして、「I take it everywhere I walk / どこにだって 持ち歩くんだ」のところで大きく掲げていました。

これはMVにも通じていて、動画の中でスティングは、雨も降っていないのに一人傘をさして歩いています。
(ここでも雨=イギリス雪=ニューヨークという、気候を使った対比が見られます)

こう見ると、単なるイギリス至上主義者のように思えなくもないですが、彼をそうさせるのは「Modesty, propriety can lead to notoriety / 謙遜や礼儀は ここでは悪評に繋がりかねない」から始まる一節に凝縮されている気がします。

善だと信じてきた価値観が、悪と捉えられかねない異世界。馴染めず孤独な中で、何を頼りに生きていくか。
葛藤した彼が辿り着いた結論が、「Be yourself no matter what they say / 自分らしくいるんだ 周りが何を言おうとも」なのでしょう。

最後に3回繰り返されるこのフレーズに、「I’m an alien I’m a legal alien / 私はよそ者 税金を納めているけどよそ者だ」が被さってくるのもまた、印象深いです。

全体的に見て取れるプライドの高さや皮肉でもイギリスらしさを表現していて、うまいなーと感じさせます。

視点を音作りに移しても、ベースのリズムにレゲエ(=イギリス)を使い、ウワモノにJazz(=ニューヨーク)を使っていて、ここでも「Englishman in New York」となっています。

ちなみに、途中で挿入されるドラムマシーンは、初期HipHop(=ニューヨーク)の音でもあります。
(レゲエは本来ジャマイカの音楽ですが、関係が深いイギリスにはジャマイカからの移民も多く、イギリスの音楽シーンにおいてもレゲエは重要な役割を果たしています)

Naturally 7版「Englishman in New York」

さてこの原曲を、Naturally 7はどう料理していたのでしょうか。

具体的な話に入る前におさらいしておくと、Naturally 7はニューヨーク出身のグループです。
そしてロジャーとウォーレンのトーマス兄弟とガーフィールドはイギリスで生まれ、その3人とドゥワイトはジャマイカ人の親を持つことを確認して、解説に移っていきましょう。

ロジャーの指揮の下、アカペラで歌われる英国愛国歌「統べよ、ブリタニア!」で、Naturally 7版「Englishman in New York」は始まります。
(途中、同じようにアカペラでバッハの「G線上のアリア」も使われます)

「統べよ、ブリタニア!」は、大英帝国時代の威勢の良かったイギリスが、俺たちが世界中を統べるのだ!と鼻息荒く歌っている曲と思っていただければ大筋間違いないでしょう笑

ガーフィールドとロジャーという珍しい組み合わせで曲は進み、オリジナル同様Jazzyな“間奏”に入ります。

そして原曲でのドラムマシーンの音を連想させるアオリの後にはなんと、JAY-Z feat. アリシア・キーズの「Empire State of Mind」が!!

Naturally 7の歌うアリシアのパートは、こんな歌詞です。

New York
Concrete jungle where dreams are made of
There’s nothing you can’t do
Now you’re in New York
These streets will make you feel brand new
Big lights will inspire you

ニューヨーク
いくつもの夢が生まれる コンクリート・ジャングル
できないことは 何もない街
そう ここはニューヨーク
立っているだけで 生まれ変わったような気分になるストリート
巨大なネオンが 刺激をくれる場所

この「Empire State of Mind」は、ニューヨークで生まれ育ったJAY-Zとアリシアの二人が、出身者ならではの視点でニューヨークの光と闇、そして日常を描いた名曲

スティングの「Englishman in New York」でニューヨークは否定的に歌われているだけに、この引用には感嘆してしまいます。

アリシアらしい切ないメロディが、またいいですよね。
こちらで訳詞付きのライブ映像が見れます)

そして次の瞬間には、またさらっと「Englishman in New York」に戻るアレンジ!
思わず声が漏れてしまう、心憎い演出です。

曲の後半、サビの「I’m an Englishman in New York」が「A Jamaicanman in New York」に変えて歌われます。
単純に、リードを取るガーフィールドがジャマイカ人だからかと思っていましたが、なんとこれにも元ネタがあり!

レゲエアーティスト・シャインヘッドによる、その名も「Jamaican in New York」というカバーがあるようで。

これを知ったときは、どれだけ奥が深いんだと呆れるくらいに驚きましたが笑

さぁそして曲も終盤!
力強くサビが繰り返されて、「Englishman in New York」は終わります。

ここで終わりでも全く問題はない満足度で、事実、一度音は止まります。
そして少しの空白の後にガーフィールドが歌い始めるのはなんと、ジャマイカが生んだスーパースター、ボブ・マーリーの「One Love」!!!その衝撃といったら!!!!!
歌われる歌詞は、こちらっ!

One Love! One Heart!
Let’s get together and feel all right

みんなの愛を一つに みんなの心も一つに
さぁ一つになろう そうすれば最高に幸せだから

排他的雰囲気の漂う「Englishman in New York」の締めくくりに配置された「One Love」。
レゲエを介した音楽的繋がりが美しいだけでなく、そこに込められたメッセージ性にも大きく心を動かされます。

自分のアイデンティティーを誇示するが故に他者を拒絶しているようにも感じるパフォーマンスを見せた後の、この愛溢れる名曲は、もうたまらなく幸せな気持ちになりますし、歌われたときのあのポジティブで開放的な空気感こそ、Naturally 7そのものだと感じました。

(一度だけ歌われる「Give thanks and praise to the Lord and I will feel all right / 神に感謝と賛美を捧げれば 私は幸せだ」の部分も、さすがという感じです)

いやぁ最高でしたね、ほんと。。

ハーモニーの美しさやリズム感、または哀しいバラードなど、多岐に渡るNaturally 7の魅力には一概に「この曲が一番!」とは言い難いものがありますが、それでも個人的に、この曲にはNaturally 7の魅力が詰まっているな~!と思う曲があります。

少し前だと、ライブ版「What is it?(DVD『Live at Montreux 2007 』 収録)」。
コロコロ変わる展開で、驚きの連続なのもそう思う理由の一つですが、その魅力が新たにこの「Englishman in New York」でも、遺憾なく発揮されたように思います。

そしてわずか5分程度の曲に、これだけの引用(サンプリング)!
彼らの音楽的要素にHipHopがあることも、改めてわかりますよね。

しかしそれらの魅力を支えているのは。
やはり元々の歌唱力であることを、この「Englishman in New York」で深く実感しました。

それはなんといっても、ガーフィールド
今までも私たちを楽しませてくれた“力強さ”ではなく、それをもっと濃くしたあの“マッチョ”な歌い方。

“楽器”の音だけでなく、ヴォーカリストとしても日々鍛錬している彼らの姿を、垣間見た気がしました。
あれは本当に凄かった…!

さてNaturally 7版「Englishman in New York」の解説、いかがだったでしょうか。
決して短くはない分量でしたが、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!

一応、最後にNaturally 7版「Englishman in New York」の動画を貼っておきますが、この曲ほどビデオの物足りなさを感じるものもないですね、、、
貼るのやめようかと思ったくらい苦笑

でもあの迫力、あの美しさは、やはりLiveに足を運んだ人だけが味わえる特権なのでしょう。
また次回のライブで聴けるのかな。
そうであってもなくても、最高のステージであることは間違いないですが!!!

(以上、すべて私訳)

「Englishman in New York」は4:20頃から始まります

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